ポーランドのサマースクールに行った話
2019年の8月、ポーランドのポズナンという街でサマースクールに参加しました。
今回は、このサマースクールのお話をしたいと思います。
サマースクールとは
サマースクールとは、夏(7月~8月)に2週間~4週間程、各都市の大学や語学学校で開催されるプログラムです。ポーランドだけでなく、ヨーロッパの国々では盛んに行われています。
サマースクールでは、その国の語学の授業はもちろん歴史や文化などの講義も受けることができ、また週末は遠足などのプログラムも用意されています。
時期的にも夏の一番良い季節に開催されるので、学生さんだけでなく、バカンスを兼ねて参加している社会人の方もたくさんいます。
期間中は世界中から生徒が集まり、みっちり数週間を共に過ごすので海外の友達ができたり、新しい文化に触れたりとても充実した時間を過ごせると思います。
ポーランドでは、首都のワルシャワを始め、クラクフやグダインスクなど、各都市の語学学校や大学でサマースクールは開催されます。
その中で、私はポズナンというポーランドの西部に位置する都市でサマースクールに参加しました。
ポズナンを選んだ理由は「夫の地元であったこと」と「参加費が他より安かった」からです。
プログラムの詳細
ポズナンのサマースクールの詳細は以下の通りです。
- 開催校:アダム・ミツキェヴィチ大学 (UAM)
- 期間 :3週間(2019年は8月9日~8月30日の3週間)
- 参加費:フルオプション 880ユーロ(約10万円)
- 内容 :ポーランド語の授業、文化や歴史の講義(英語orポーランド語)
※今年のサマースクールはコロナウイルスの影響でオンラインでの開催です。
フルオプションには、授業料、教材費、宿泊費、食事(3食)、遠足費が含まれますが、自分で宿泊先や食事を用意するなら、授業料と教材費のみでも申しこむことができます。フルオプションの宿泊先は学生寮になるので、基本2人部屋となりまますが、プラス料金で1人部屋にしてもらうことも可能でした。
私はルームメイトがいるほうが話す機会も増えるかなと思い2人部屋にしました。実際に過ごしてみて問題があれば部屋も変えてもらうこともできるようです。
また、学生であればポーランド政府の奨学金で参加することもできるようなので、大学生の方は是非チェックしてみてください。この奨学金は返済の必要のないものです。
(残念ながら、今年は新型コロナウイルスの影響で奨学金の申し込みは中止です。)
アダム・ミツキェヴィチ大学 (UAM)
このプログラムを開催している大学はアダム・ミツキェヴィチ大学(ポーランド語:Uniwersytet Adama Mickiewicza、英語:Adam Mickiewicz University)という国立大学です。1919年に設立され、詩人のアダム・ミツキェヴィチから名前を付けられており、ポーランド内でもレベルの高い大学として有名です。
キャンパスがいくつかありますが、サマースクールで通ったキャンパスはお城みたいで中も映画に出てくるような美しい建物でした。
授業や他の参加者
ポーランド語の授業は、クラスがいくつかに分かれており、初日にクラス分けテストがありました。全くの初心者でもアルファベットから始めてくれるクラスがあるので安心です。先生はネイティブのポーランド人ですが、初級クラスではポーランド語を挟みつつ英語で文法の説明をしてくれます。また、授業の質がとても良いので3週間終わるころには初心者でも自己紹介や数の数え方、簡単な会話であればできるようになると思います。
クラスは10人ずつくらいで、年齢層も10代~40代と様々で、国籍もヨーロッパはもちろんアメリカやアジアなど世界各国から集まっていました。(チェコ、ドイツ、フランス、アメリカ、台湾、モロッコetc.)
参加者の目的も、自国でポーランド語を専攻している大学生はもちろん、今後ポーランドの大学に通いたいという高校生や、ロシア語の先生をしている人、ポーランド人の父を持つがポーランドは全く知らないので興味を持ってきたという高校生、夏休みを利用してなんとなく参加してみたという大学生など多岐に渡っていました。
定年して社会人学生をしているという方もいて、色んな人生を送っている方と出会えるので自分の人生や将来を考えるきっかけにもなり、とても刺激を受けました。
サマースクール中の生活
基本的には平日学校に通い、週末はプログラムがなければ自由に過ごすことができます。平日は主に午前中に語学の授業、午後からは講義です。講義は毎日ではないので、ない場合は寮やカフェで勉強したり、街を散策したりしていました。
食事は3食、学校の近くの食堂で食べ、宿泊先は大学の学生寮でルームメイトと2人一部屋でした。
週末は、参加自由でポズナン郊外の街へ学校から遠足に出かけたり、市街地を観光に連れて行ってくれたりしますので、一人で過ごすということはありませんでした。またアジアからきている学生さんたちは、学校のプログラムには参加せず、ドイツやポーランドの別の街へ旅行に出かけていました。
残念だったこと
プログラムは忙しすぎず暇すぎずで充実しており、概ね満足でしたがひとつだけ、食事が非常に残念でした。朝は毎日、パン、チーズ、ハムを基本にやスクランブルエッグなど同じでしたがどれも美味しく満足でした。
昼食は、メインに付け合わせ(主にじゃがいも)のがっつり系で、これは当たりはずれがありましたが美味しいことが多かったです。
問題なのは夕食です。ポーランド人の夕食はサンドイッチなどで済ますことが一般的で、食堂の夕食もその習慣通りサンドイッチとスープのみでした。夕食を一番豪勢にする日本人にはつらいですね。しかしこの夕飯がサンドイッチというのは他国の人にもつらかったようで、みんな不満を漏らしていたので、少し安心しました。
サンドイッチのパンもパサパサで次第に夕飯に行くのが苦痛になってきたので、途中からはスーパーで適当に買ったりするようになりました。
幸い、寮の敷地内にスーパーがあり、部屋には冷蔵庫もあったので夕食は安く調達することはできました。しかし、食事代払ってるのにな。。。という思いがあり、とても残念でした。
全体を通して
3週間という短い期間ですが、毎日とても楽しかったです。ルームメイトは超絶美人なウクライナ人の大学生でポーランド語上級者でしたが、英語があまり話せない方でした。一方で私はポーランド語が全く話せなっかたのでコミュニケーションをとるのが難しかったのですが、とても人懐っこい優しい方で、例えスムーズにコミュニケーションが取れなくても諦めず拙くても英語で話しかけ続けてくれたので、寮でも楽しく過ごせました。
参加者の多くは学生でしたが、年齢が近い人もいました。また海外では年齢差はあまり気にならないので10代の子や大学生など普段話す機会のない年齢層の人も向こうから気軽に話しかけてくれますし、話してるうちに新しい発見もたくさんありました。なにより自分が大学生だった頃の夢や希望に溢れていたあの日々を思い出し、もっと頑張ろうと思えました。
ポズナニは夫の地元で帰省の際は一緒に行っていましたが、クリスマスの数日だけの滞在で街のことは全然知りませんでした。今回、一人で散歩したり、クラスメイトとカフェに行ったり観光したりしてその地でわずかでも生活したことで、ポズナニという街が単に「夫の地元」ではなく、私自身の思い出の地にもなりました。3週間だけでしたが、サマースクールで知り合った方たちとは今でも連絡を取り合っています。個人的には、これが最も参加して良かったと思えた理由です。
全く知らない国でその国の言語を勉強することは、知識だけでなく新しい価値観や考えを与え、世界を広げてくれることでしょう。そして、色んな国の友人もできネットでしか知ることのできない他国の話を直接聞く貴重な機会にもなります。
みなさんも、旅行ではない思い出の地を海外に作ってみるのはいかがでしょうか?
国際結婚したら苗字はどうなるのか
外国人と結婚したよと報告すると、ほぼ全員に「国籍はどうなるの?」と「苗字は何になるの?」と聞かれました。
国籍はどうなるの?
国籍は国によるみたいですが、ハンガリー人やポーランド人と結婚する場合は、結婚しただけで国籍が変わることはありません。
子供が生まれた場合、その子供は両親のそれぞれの国籍を取得しますので、二重国籍になります。多くの国では二重国籍は当たり前のように認められていますが、日本では認められていません。そのため、日本国籍と他国の国籍をもつ子供は22歳までに国籍を選択しなければなりません。
苗字は何になるの?
周囲の反応
日本では戸籍制度の影響で、夫婦は必ず同じ苗字を持たなければなりません。そして変えるのは女性がほとんどです。そのため、日本人の友達からは「苗字は何になるの?」と聞かれるのです。しかし、ハンガリー人含む外国人の友達からは「苗字はどうするの?変えるの?」と聞かれました。
これは、夫婦別姓が選べる国だからこのような聞き方になるのだろうと思いました。
「日本では夫婦は同じ苗字じゃないといけないんだよ。」と外国人の友達に伝えると、みんなとても驚いていました。
苗字の選択肢
日本人同士であれば夫婦は苗字を揃える必要がありますが、国際結婚の場合は相手に戸籍がないので夫婦別姓を選択することも可能です。
ポーランドでは、結婚後の名前を「自分の姓ー相手の姓+自分の名」とすることができます。これであれば、自分の苗字を変えずに相手の苗字も持てるので、私はこれを選びたかったのですが、残念ながら日本の法律でこれは認められていません。
日本国籍保有者は、苗字は一つしか持てないからです。
苗字を「自分の姓ー相手の姓+自分の名」にすると、苗字を2つ持つことになりますので、「元の苗字 → 元の苗字+相手の苗字(これで一つの苗字とする)」という変更の手続きを家庭裁判所で行わなければならず、とんでもなく面倒なことになります。
そのため「相手の苗字に変える」or「元の苗字を保持する」の2択となりました。
Gerd AltmannによるPixabayからの画像
私の場合
迷いに迷った挙句、いくつかの理由で私は「元の苗字を保持する」を選択しました。
夫婦別姓です。フルネームが変わらないので、結婚後も身分証などの書類を何も変更する必要なかったのでかなり楽でした。
そして「元の苗字を保持する」を選択した理由は以下の通りです。
- カタカナの苗字に抵抗があった。
結婚したのであれば、苗字は旦那さんのものになるのが普通じゃないのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも私は、自分の苗字がカタカナ表記になることに少し抵抗がありました。夫の苗字は当然アルファベット表記なのですが、日本ではアルファベットの名前を登録できません。そのためカタカナになります。なぜわざわざカタカナにしないといけないんだと感じ、気が進みませんでした。
- ハンガリーでまた滞在許可証やパスポートなどすべての重要書類の名前を書き替えないといけない。
ハンガリーではただでさえ滞在許可証の申請に多大な労力を要するのにまた移民局いくのかと思うと鬱すぎて、そのままでも良くない?ってなりました。
- 将来子供が生まれた場合、私が日本の苗字を保持すれば、その子も日本の苗字を受け継げる。
先ほども少し触れましたが、子供が生まれた場合その子はポーランドと日本の国籍を持つことになります。日本の国籍であれば日本の苗字を持っているほうが将来日本で生活するとなった場合生活しやすいのではないかと思いました。10年、20年後のことは分かりませんが、今現在ではカタカナの苗字=外国人と思われ嫌な思いをする子もいると聞きました。結果、子供はポーランドでは夫の苗字、日本では私の苗字を受け継ぐようにしました。
- 自分の苗字が好きだった。
私の苗字は少し珍しく、今まで同じ苗字の人に会ったことがありません。昔は、 結婚しても苗字変えたくないな~などと思っていたことも思い出し、せっかく選 べるし自分の名前が好きなのだから元の苗字のまま生きようと思いました。
他の人たちはどうしてるのか
国際結婚した他の日本人の方はどうしているのでしょうか。私も苗字を変えるか結構迷ったので、知り合いの日本人の方に色々聞きました。
「夫の国では夫婦別姓が普通なので変えてない」という人もいれば
「日本で外国人夫と住むので日本の苗字を保持した」という方など
理由は様々でしたが、私の知り合いの方は苗字を変えてない方が多かったです。
ですが皆さん口を揃えて仰っていたのは、
『苗字を変えてなくても何も困ったことはない』でした。ヨーロッパでは、ハンガリー人でも苗字はドイツ系だったりスラブ系の人もいます。日本のように明らかに日本名以外は目立つというようなことは起きないので、誰も気にしないようです。ポーランドでは旦那さんの苗字に変える女性が多いので、「どうして変えなかったの?」と聞かれたこともありますが、理由を説明すれば「そうなんだ~」くらいの反応でした。そもそも夫婦別姓でも驚かれないので私も今のところ特に不便に感じたことはありません。
苗字を選ぶ自由
日本では夫婦、つまり家族は同じ苗字を持つことが当然で、私も結婚したら苗字は変わるんだと思い込んでいました。日本では、思ってる以上に苗字は大切で、結婚も個人同士というよりは家同士の結びつきになるような感覚が今でもあると思います。
私もこの感覚がある中で育ったので、苗字を変えないでも良い選択肢が急に出てきて戸惑いました。家族で苗字が違うってどうなんだろう?というのが最後まで頭から離れませんでした。でも戸惑ったということは、気づかないうちにやはり苗字を変えることに抵抗があったんだろうと思います。生まれた時から今まで共に生きてきた名前で、この名前があるから自分は自分なのではないかと。苗字を変えない決断をするまでたくさん考えました。最終的には、上記で述べたような理由と、夫が「変えなくてもいいでしょ!^^」と家族で苗字が違うことにさほど違和感を感じていなかったのでそのまま元の苗字を保持することに決めました。
昨今、日本でも夫婦別姓を認めてほしいという活動も活発になっています。私も夫婦別姓でも夫婦同姓でも本人たちの考え方によるものなので、お互い納得できればそれで良ければそれでいいのではないかと思います。色々法的にも難しいところはあるのでしょうが、近い将来、日本人同士の婚姻でも苗字を選ぶ自由が認められると良いですね。